
6月13日発売のダリア文庫「恋の仮面舞踏会(マスカレード)」の
番外短編「今夜もあなたと」を特別大公開!
文庫の巻末掲載の汞先生のコメントイラストはこのお話のイメージイラスト!
あわせてお楽しみ下さいね♪
諒一の部屋のウオークインクローゼットを覗きこむなり、光良は唖然とした。
「……すごいな。劇団とかテレビ局の衣装部屋って、こんな感じなのかな」
「それほどそろってないよ。まあでも、ネコ耳とか、パイロットの制服なんてものは一般家庭にはないだろうな」
苦笑しながら、諒一はテイルコートを探しはじめる。来週のイベントは執事ナイトに決まっているので、衣装を揃えておこうと思ったのだ。ちょうど光良と会う約束をしていたので、荷物運びに使ってしまえとばかりに自宅マンションに引っ張りこんだ。
「あった、あった。えーと、一枚二枚……五枚あればいいかな。それと、白い手袋と……」
全部を一人で持ち上げようとすると、やはりずしりと重い。手伝ってもらおうと振り返った諒一は、そこに白衣姿の光良を見つけて目を丸くした。
「………なにやってんの?」
「どうだ?」
光良は普段着のラフなニットの上に白衣を着て、首に聴診器をぶら下げている。銀縁の伊達眼鏡までかけて、きりっと表情を引き締めてみせた。もともと目鼻立ちが整っている光良だ。白衣と眼鏡でインテリ風になり、驚くほど知的な雰囲気が出来上がる。横目でいつになくクールっぽく見つめられて、諒一は不覚にもドキッとしてしまった。
「な、なに、そんな格好して」
「似合うだろ。自分でもびっくり」
光良は機嫌よく姿見で全身をうつしている。確かに似合っているからなにも言えず、諒一は動揺しながら視線をそらした。いまさら白衣ごときにときめいてどうする、とおのれにツッコミを入れたくなる。
きちんと想いを確認しあって恋人になってから早数カ月。佐紀夫の引っ越し先が決定して部屋が空き次第、光良が移り住むことになっている。同棲するにあたって、諒一は光良の妹と対面した。さすがに両親にはまだカミングアウトはしないらしいが、妹にすべてを話して会わせてくれたことには感激した。そこまで関係を深めておいて、初心な小娘のようにどきどきするなんて恥ずかしい。いい加減、落ち着かなければ。
「それもイベント用の衣装なんだから、勝手に遊ぶなよ。元の場所に片づけておいて……って、それ、なに……?」
「なにって、見てわからないか?」
にっこり笑顔の光良は、なんと看護師の衣装を手にして広げていた。薄いピンク色の生地でできたナース服は男が着られるようにあちこちがリフォーム済みで、スカート丈はミニだ。白衣ナイトのショーで使用したことがある。それを、広げるだけでなく諒一に向けてひらひらとさせて、光良はなにやらアピールしていた。
「おい……」
嫌な予感に、諒一の目は据わった。
「まさか、それを……」
「着てくれ?」
光良の目はキラキラと光っており、よこしまな期待に満ちている。いったい誰が光良にこんな遊びを教えたのか——って、諒一以外にいない。積極的に教えたつもりはないが。
「着るだけなら、いいけど……」
「そんなわけないだろ」
「だよな……」
諒一は恥ずかしさに赤くなってくる顔を両手で覆い、ため息をついた。コスプレを売りにしているホストクラブを経営していても、諒一は日常で衣装を身にまとう変態さんではない。どんな衣装だって、他のホストたちと一緒に店で着るから恥ずかしくないのだ。自宅で恋人相手になぜそんな格好をしなくてはならない?
「えーと………佐紀夫がいつ帰ってくるかわからないし、そういうのはちょっと……」
同居している佐紀夫は不動産屋へ行っていて留守だ。ついさっき、希望に沿うような物件が見つかったと電話があり、出かけていった。
「出かけついでに店の様子を見てくるから、夜まで帰らないって言ってたんじゃないのか?」
「うっ」
光良の耳にも聞こえていたか。くそっ、逃げ道が絶たれた。
「なぁ、諒一、着てくれよ。絶対に似合うから」
似合うのは知っている。すでに店で着ているから。客には大好評だった。
「なぁなぁ、これ着てさ、ちょっと遊ぼうぜ」
「う………」
恋人に甘えられると、諒一は断りきれない。しかも光良は年下だ。
つきあっているうちにそれを知った光良は、最近よく下手に出てくるようになった。
「諒一」
ナース服を手にしたまま、光良が抱きしめてきた。優しくあやすようにくちづけられて、うっとりしてしまう。気持ちよくさせられたところに、「着てくれ」ともう一度頼まれて——諒一は頷いてしまった。
「俺のことはドクターって呼べよ」
ミニ丈のナース服に着替えた諒一に鼻の下をのばし、光良はさっそくプレイモードに入ったらしい。ウオークインクローゼットから出され、寝室のベッドの前に立たされる。光良はベッドに座り、にやにやと見上げてきていた。
「ド、ドクター…?」
「なんだい、諒子くん」
諒子ってダレだよ。情けなさ過ぎてがっくりと俯いてしまいそうになる諒一に、光良は膝に座るよう促してきた。
「どうして看護師がドクターの膝に座るんだよ」
「いいから、ほら」
腕を引かれて、しかたなく光良の膝に横座りすることに。
「うーん……、しっくりこないな……。こんなふうに座ってみたら?」
「えっ? おい、ちょっ、それは嫌だ、嫌だってっ」
「いいから」
足を開かされ、光良の膝を跨ぐようにして座らされた。当然、ミニ丈のスカートはめくれあがり、大腿まで露出する。向かいあっているので、正面の光良からはスカートの中身が見えているだろう。さすがに下着までは替えていないのでボクサーブリーフだが。
「すごい、かわいい……」
「そうか?」
「似合ってる」
この場合、褒められているのはわかるが、喜んでいいものかどうか——。
「エッチだな」
「あ、こらっ」
膝から腿へと、光良の手が滑る。スカートの中にもするりと入ってきて、股間の膨らみを包みこむようにして揉んできた。
「いきなりかよっ」
「あんまりかわいくてエロいから、ドクターは注射したくなっちゃって」
「普通、ドクターはナースに注射しませんっ!」
「痛くないように注射するの得意だから」
「しなくていい!」
「いいな、このすべすべの太腿。あとでここに俺の注射器を挟みこんでぬるぬるしていい?」
「おい、人の話を聞け!」
抗議を続けようとした口は、キスで塞がれてしまった。
「ん、んっ……」
いやらしく舌を絡ませてくる光良の股間は、白衣の下ですでにかなりの硬度になってしまっている。まったく諒一は触れていないのに、シチュエーションだけで高ぶったらしい。
光良はいつのまにこんなプレイに抵抗がなくなったのだろう。柔軟性があるというか、想像力が豊かというか、普通とは言えないプレイに目覚めさせてしまった諒一としては、すこしばかり罪悪感を抱かずにはいられない。
「あ、んっ、ん……」
ナース服の上から乳首を探られて、小さな突起を指先で撫でられる。もどかしすぎる刺激に、もっとと腰が揺れた。
「気持ちいい?」
そっと耳元で聞かれ、諒一は答えるものかと唇を噛みしめた。答えなくとも、性器の変化でわかっているはずなのだ。恥ずかしいことを言わせようとしている。
「じゃあちょっと、注射するところに準備をしようか」
光良が楽しげな口調で予告しつつ、諒一の後ろに手を回した。下着の中に手が入ってくる。
本人の複雑な気持ちとは関係なく、そこは期待にひくひくと震えていた。指先が触れる。それだけで体の芯がふにゃりと溶けて消えてしまいそうな快感がわきおこった。
「あ、あ、あ………」
指先はじりじりと中に入ってくる。嬲られることに慣れているそこは、異物を歓迎するように収縮した。たまらない快感が背筋をびりびりと震わせ、羞恥心を吹き飛ばしてしまう。
「光、良、光……良っ」
腕から力が抜け、光良にしがみついていられなくなりそうになると、すかさずたくましい腕が腰をホールドしてくれた。
「もっと? してほしい?」
諒一はがくがくと頷く。指だけじゃ物足りない。もっと太くて長くて熱いものでそこを蹂躙してほしかった。
「も、もっと……」
「じゃあ、注射しようか」
光良は嬉々としてベルトを外し、屹立を取り出した。天をつく勢いで熱くなっているものを見ると、なぜか唾液があふれてくる。口腔で愛撫してあげたくてたまらなくなるのだ。気持ちよさそうにしている光良を見るのが好きだった。
だがいまは早く体を繋げてしまいたくて、光良の膝の上に乗ったままボクサーパンツをもぞもぞと脱いだ。ナース服はそのままに、対面座位で体を繋げる。広げられて穿たれる衝撃に、背筋が撓った。やはり痛みはある。だがすぐに快感で埋めつくされる。
「あ、あ、いい、いい、光良、ああっ」
「すげ……、熱くて……締まる……」
苦悩するような顔で光良が快感に耐えている。自分の体で気持ち良くなっているんだと思うと、官能は倍増しになった。
「もっ、もっと、光良、もっと……っ」
「中、出して、いいか?」
注射なら中出しは当然だろう、なんて軽口を叩く余裕なんてない。ベッドをぎしぎしと軋ませながら、二人はともに頂点を目指した。
「あ、ん、ん、いく、も、いっちゃ、ああっ」
ほぼ同時に達して、繋がったまま一緒にベッドに倒れこんだ。乱れた息を整えないままに、またくちづける。諒一と光良は鼻先を触れあわせながら、いつもよりずっと早く達してしまった自分たちに照れ笑いした。
クビから下げていた聴診器を手にして、光良が諒一の乳首にいたずらしてきた。布地の上から、小さな突起を聴診器で潰すように刺激してくる。いったばかりの体にそんなことはしないでほしい。
「やめろよ……、んっ………あ………」
入ったままの光良をきゅうきゅうと締めつけてしまう。萎える間もなくふたたび力をみなぎらせてくる光良に、諒一は「もう……」と不機嫌を装いながらも両足を恋人の腰に絡めた。
「もう一回、注射してもいいか?」
「ダメって言ったら、やめるのかよ」
「やめない」
光良はニヤリと笑い、諒一を組み敷いてゆったりと腰を使いはじめた。中に出された体液がかきまぜられて卑猥な音をたてている。耳からも犯されている気持ちになりながら、諒一はとろけるような快感に溺れていった。
このプレイに味をしめた光良が、同棲生活を開始すると同時に、あらゆる衣装を試したがったのは言うまでもない——。
おわり


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